占いお宿II 新たな契りを結ぶ時
時間が経つとともに、しだいに緊張が高まっていくのをひしひしと感じる。

すっと晴れていく水晶の中を、じっと見つめた。

「どこかしら?ここは……緩衝地帯ではないわね。たくさんの人がいるわ。まるで王都のような栄えた街よ」

行き交うのは人間ばかり。とはいえ、この中に人型になっている獣人がいても、私には見分けられないけれど。

「……ああ。ここはグリージアの王都ね」

ピクリとアルフレッドが反応した気がするけれど、とりあえず見ないふりをする。

「これ……この家は…………ローズベリー伯爵のお屋敷よ」

セシリアと名乗っていた私の生家。なぜこの場所が映し出されたのか?景色は屋敷の周辺に移っていく。

「ミランダだわ!!あとは……誰かしら?身に付けている物からすると、貴族の女性ね。あなたの他に2人。立ち話でもしているみたい」

ミランダは将来、グリージアの王都で暮らしているということなのだろうか?
そのままじっと見つめていると、1人の男性が近寄ってきた。

「誰かしら?男性が来たわ。女性達に何か言ってるけど……後ろ姿だから、顔がわからないの。少し茶色がかった……ブロンズの髪の男性よ。その人が、あなたの手を取って一緒に去っていくわ」

そこで映像がプツリと途絶えた。

「その人が、私の伴侶なのかしら?」

「それはわからないけれど、一つ確かなことは、あなたがすごく穏やかな顔をしていたということ」

「そう」

「はっきりしない内容で、申し訳ないわ」

もう少し明確なら、ミランダを安心させられただろう。

「ライラ、十分よ。将来の私には、ここの知り合い以外にも、穏やかな表情で言葉を交わせる人達がいる。それで十分だわ。ありがとう」


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