占いお宿II 新たな契りを結ぶ時
「セシ……いや、ライラといったかな?」
穏やかな声音は、記憶の中のものとちっとも変わらない。あの頃と同じ、優しげな視線も。緩やかなカーブを描く口元も。
少しだけ日に焼けた肌が、彼の今の生活を物語っているようだ。
「ご無沙汰、しております」
やっとの思いで紡いだ言葉に、優しく頷き返してくれる。
「ああ、久しぶり」
「お元気そうで……ううん、もういいわ」
バッと振り返ると、アルフレッドを半ば睨むように見て、覚悟の宣言をする。
「そうよ。私はセシリア・ローズベリーよ」
再び客人に視線をもどすと、可笑しそうに微笑む父、ブランドン・ローズベリーがいた。〝お父上……〟と呟くルーカスは、やっぱり無視だ無視。
「お父様。なにも告げないまま行方をくらまし、心配をおかけして申し訳ありませんでした」
「心配はした。ただ、セシリアなら大丈夫だと、信じてたよ。それに、ヴィンセントもそこの元婚約者殿も、セシリアのことを教えてくれたからねえ」
〝元婚約者殿〟のあたりが、なんとなく強調された。あえてアルフレッドの方は振り返らないでいてあげよう。この2年弱の間に、王族に対して父もずいぶん遠慮なく発言するようになったみたい。
「お父様のことは、水晶で占って知っていました。叔母様の所にいらっしゃるんでしょ?」
「ああ、そうか。あの水晶だね。セシリアには、そんな力があったんだね」
「ええ。この宿屋で働きながら、占い師もしてるのよ」
「そうか」
いつまでも立ち話をしてるわけにはと、食堂の椅子に座ってもらった。そこに、ミランダがお茶を出してくれる。
穏やかな声音は、記憶の中のものとちっとも変わらない。あの頃と同じ、優しげな視線も。緩やかなカーブを描く口元も。
少しだけ日に焼けた肌が、彼の今の生活を物語っているようだ。
「ご無沙汰、しております」
やっとの思いで紡いだ言葉に、優しく頷き返してくれる。
「ああ、久しぶり」
「お元気そうで……ううん、もういいわ」
バッと振り返ると、アルフレッドを半ば睨むように見て、覚悟の宣言をする。
「そうよ。私はセシリア・ローズベリーよ」
再び客人に視線をもどすと、可笑しそうに微笑む父、ブランドン・ローズベリーがいた。〝お父上……〟と呟くルーカスは、やっぱり無視だ無視。
「お父様。なにも告げないまま行方をくらまし、心配をおかけして申し訳ありませんでした」
「心配はした。ただ、セシリアなら大丈夫だと、信じてたよ。それに、ヴィンセントもそこの元婚約者殿も、セシリアのことを教えてくれたからねえ」
〝元婚約者殿〟のあたりが、なんとなく強調された。あえてアルフレッドの方は振り返らないでいてあげよう。この2年弱の間に、王族に対して父もずいぶん遠慮なく発言するようになったみたい。
「お父様のことは、水晶で占って知っていました。叔母様の所にいらっしゃるんでしょ?」
「ああ、そうか。あの水晶だね。セシリアには、そんな力があったんだね」
「ええ。この宿屋で働きながら、占い師もしてるのよ」
「そうか」
いつまでも立ち話をしてるわけにはと、食堂の椅子に座ってもらった。そこに、ミランダがお茶を出してくれる。