占いお宿II 新たな契りを結ぶ時
「獣人は、生涯たった1人の異性を番として、愛し抜く種族です」

「ほおう、伴侶ということですか」

ちらりとアルフレッドに目を向ける父。私のことがあって以来、ただ優しいだけの人ではなくなったのかもしれない。その視線はアルフレッドの心情を慮るものではなく、試すような雰囲気を感じる。

「はい。番は、匂いでわかるんです。この人が自分の番だと。間違えることはありません。そしてそれは、種族を超えて見つかることもよくあることです」

ルーカス……ここで私に視線を向けないで欲しい。あくまで、私は承諾してないのだから。

「ここではじめてライラに会った時、私の番はこの人だと、すぐにわかりました」

「おい」
「なっ」

ハモったのはアルフレッドとヴィンセント。そして、そんな邪魔者を睨み付けるルーカス。

「おい、アルフレッド!!なにライバルを増やしてくれてんだよ!!」

つい、いつもの口調で放ち、ヴィンセントを顎で指した。

「しょうがないだろ。ヴィンセントはライラの幼馴染だ。それに、安心しろ。彼には婚約者がいる」

さすがに騎士であるヴィンセントは、2人のやりとりに気安く割り込めないようだ。けれど、そのこめかみがピクピクしているところを見ると、言いたいことはありそうだ。山ほども。
父は、ついいつものようにやり合う二人を、特に驚きもせず、穏やかに見つめている。

「お父様、意外でしょ?」

「ははは。殿下のこんな姿は、はじめて見るな。彼も一人の青年なんだな。それに、ルーカスも。獣人と人間は、気さくに付き合えるのだね」

これを〝気さく〟と上手いこと言った父に、思わず苦笑してしまう。

「ヴィンセントも、巻き込まれちゃったね。ごめんね」

「いや。でも、どうすんの、この人達……」

「あっ、おいこら、ヴィンセント!!俺の番に勝手に話しかけるな!!」

思わず肩をすくめる私と、ため息を吐くヴィンセント。父は相変わらず穏やかな笑みを浮かべている。



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