占いお宿II 新たな契りを結ぶ時
「お父上!!」

再びルーカスが、聞きなれない言葉遣いで父に声をかけた。変なことを言い出さなきゃいいのだけれどと、恐々と隣を見る。

「なんでしたか、ルーカス様」

「ルーカスでかまわない。ここではただの客にすぎない」

「わかりました。ではルーカス、なんでしたか?」

自分に向けられる、アルフレッドとヴィンセントの視線に、まるで気が付いていないのだろうか。ルーカスの世界は今、自分と父と私しかいないようだ。不安でしかない。

「まず、お……私は、オオカミの獣人で、先ほども述べたように、サンミリガン王国の第一王子です」

その改めまして的な自己紹介はいるの?

「ほおう。オオカミの獣人ですか」

獣人と聞いても、父の表情に差別的なものは一切ない。父はそういう人なのだ。

「はい。今はわけあって……そ、その、姿を変えられないのですが……」

カエルだな。
それより、言葉遣いがはちゃめちゃだから。普段の彼を知っているだけに、不気味で仕方がない。

「それは、大変そうですね」

「ええ。解決する方法はわかっているので、もうすぐ治るはずです」

その呪いを解く相手が私だというのなら、解決までほ程遠いはず。たぶん。

「それで、解決したあかつきには、ライラが私の番になることを認めていただきたい」

「「なっ!?」」

途端に気色ばんだアルフレッドとヴィンセントを、父は落ち着いた様子で宥めた。

「番、ですか?すみませんが、私はグリージアの人間なので、そもそも獣人がどういう種族なのか、番がどういう存在なのかがわからないのですが」

父のことだから、ある程度は知っているはずだけど……ルーカスの人となりを知るために、とにかく少しでも多く話をさせたいようだ。


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