占いお宿II 新たな契りを結ぶ時
「後ほど、お部屋に伺いますわ」

「え、遠慮する」

「まあ!朝食を遠慮なさるなんて、どこかお体でも悪いのかしら?」

〝王子に何かあっては大変〟なんて近付いてくるものだから、すっかり怯えたルーカスは、「ラ、ライラにお願いする」と言い捨てて、足早に部屋へ駆けていった。

「まあ、ルーカス様ってば」

もはやミランダは、この状況を楽しんでいるだけだ。
魔女だった頃のミランダは、その想いの深さはともかく、確かにルーカスのことを気に入っていた。けれど、今は彼をおもちゃにしているようにしか見えない。そんなお気に入りのおもちゃを取り逃してしまったミランダの、次なる獲物と言えば……

「アルフレッド様にも、後ほどお届けしますわ」

「あ、ありがとう。だ、だが、お手を煩わすのは申し訳ないから、時間になったらここでいただくとしよう」

お手を煩わすもなにも、それが私達の仕事だ。
アルフレッドもまた、〝後ほど〟と足早にもどっていった。


「さてと、ライラ。これで掃除が捗るわよ」

そうか。どうやらミランダは、仕事の邪魔にしかならない2人を、やんわりと(そうでもないかも……)追い返してくれたようだ。

「ええ、カウンター周りの用意をしてくるわ」

朝食は宿泊客のみの提供となる。今朝は、アルフレッドとルーカスに、おそらくその家臣達のみ。相変わらず、ぼちぼちな客数だ。








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