占いお宿II 新たな契りを結ぶ時
そもそも、なぜ王族である彼らがこんな朝早くからここにいるかというと、見ての通り、私がここにいるからだ。自惚でもなんでもなく、本当にそれが理由だから困ったものだ。

時間を見つけて毎日のようにここへ通う2人に、見かねた両国の国王が、この宿に彼らの執務室を設けてしまったのだ。
そこで将来の嫁を口説きつつ、時期国王として両国の仲を深める段取りをつけろと、思わずそれでいいのかと突っ込みたくなってしまうような行動に出たのだ。
2人は、昨夜もここに泊まっていたのだろう。

私にとっては煩わしいばかりだけれど、客の目には少しばかり違って見えるらしい。
時期国王である若き青年2人のやりとりはなんとも面白く、微笑ましく見えるようで、彼らがそうであるならばと、庶民レベルでは両国の仲が深まりつつあるというから驚きだ。


「あら、ルーカス様、アルフレッド様、ごきげんよう」

いうならば、ギラギラセクシー令嬢のような雰囲気で、2人に声をかけたミランダ。外の掃除を終えてもどると、早速おもちゃ……いえ、2人の存在に気が付いた。
これに尻込みする、やんごとなき青年2人。

「お、おはよう、ミランダ」

なんとか返したアルフレッドは、まだマシというもの。すっかり怯えるルーカスは、いつもなら彼に忠実な家臣のジャレットを盾にするところだけれど、今朝はまだ不在。あろうことかルーカスは、さりげなく私の背に隠れた。ミランダを注視する彼を確認した私が、そっと体の角度を変えてその姿を丸見えになるようにしたことに、彼はまだ気が付いていないようだ。

「あら、ルーカス様。今朝もつれないですわねぇ。ご挨拶ぐらい、返してくださればいいのに」

〝恥ずかしがり屋さんなのね〟と微笑まれ、無防備にも全身をミランダに晒していることに気が付いたルーカスは、「お、おはよう」と若干震える声で返しながら、再び私の背に隠れた。
それを見たミランダは、くすりと意味ありげな笑いをこぼす。



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