鬼の棲む街
鬼と・・・



リビングの扉を開けるとシンとしたそこに寂しさが込み上げる


「双子に絆されちゃったか」


自嘲気味に呟いた時


携帯電話が震え始めた

・・・もしかして

双子も同じ思いかと慌てて画面を覗くと見たことのない番号が表示されていた

・・・誰?

断続的に震え続けるそれに出ないという選択をした気持ちがブレた


意を決して指をスライドさせる


(もしもし)

聞こえてきたのは女の人の声だった

「・・・はい」

(驚かせたわね。愛よ)

「は・・・え?愛、さん?」

(そう。冷鬼で大魔神の愛よ)

そう言うとフフと笑った愛さん

大魔神がバレていることに暫し口籠もった

(痛い思いさせたわね、ごめんなさいね)

「あ、いえ」

(あの女、頭おかしいけど聖の妹だったから特に処分しなかったのがいけなかったみたい
もう二度と半グレ達も買い手もあの女も貴方に近づくことはないから安心して)

「・・・はい」

(それから・・・双子のことだけど)

「・・・はい」

(貴方は一般人だから、無理だと思ったり嫌だとか怖いと感じてるなら同程度の他のマンションも紹介するし
卒業までの四年間、双子も紅太も近づかせないけど。どう考えているかしら)

関わってこようとする双子と違って冷鬼は陰の立場で提言してくれている

「私、四年後には元の街に帰るんです、だから
それまでの間、本当は出来なかったことをしてみたい」

(出来なかったこと?)

「あの街に居たら出来なかったアルバイトも友達作りも恋も、駆け引きもしてみたい」

(出来なかった、じゃなくて。する気が無かっただけでしょう?)

決して強くもない声なのに肌がゾワリと粟立ち言葉に詰まった










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