鬼の棲む街





GWに入る週末金曜日


父様からの迎えは大学から帰った時には到着していた


「お帰りなさいませ、お嬢様」


「フフ」


基の運転手スタイルに笑いが込み上げる


「笑ってんなよ」


小さい悪態でさえ笑いのツボになって車に乗り込んでからも暫く笑っていた


「寝てて良いぞ」


「うん」


学食でお昼を済ませたからお昼寝にはもってこいの乗り心地に

ウトウトとし始めた時、携帯電話が鳴り始めた


「もしもし」

(子猫ちゃんよ〜俺を無視するなんて良い度胸じゃね〜のよ)

いつもの緩い声にクスと笑う

「用件は?」

(クー、子猫ちゃんは氷だ)

「で、なに?」

(実家帰るんだったよね?)

「うん」

(少し会えないかな〜と思ってさ)

「お生憎様、もう迎えの車の中」

(え〜。なんだよそれ〜昨日から返事もないし、何?態と?)

「だって眠かったんだもの」

(もぉ〜。塩対応のままGW明けまで放置とか、俺泣いちゃうけど)

「慰めてくれる子猫ちゃんは大勢いるでしょう?」

そう言って終話ボタンを押した


昨日、デザートのアイスを食べている途中で
巧からのメッセージを受信していた

森乃家を出たあと愛さんと一平さんに手を振って別れて

私はまた紅太と尋に挟まれて車に乗った

マンションまで歩くと言った私を「送る」と聞かなかった紅太の所為だ

その車内で繁華街と大通りの交わる交差点の信号待ち

両隣の二人にそれが見えていたのかは知らないけれど


綺麗な女性と腕を組んで歩く巧を見てしまったのだ





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