鬼の棲む街








「ただいま」


出迎えの中谷さんに買ってきたケーキを渡す


「私は食べてきたから。これは中谷さん達で食べてね」


「お嬢様、ありがとうございます」



突然出かけた言い訳にと基はケーキの美味しいカフェに寄ってくれた


『小雪の気まぐれは今に始まったことじゃない』


そう笑って帰って行ったけど
なんとなく気づかれていたと思う


そして・・・今


「なによ」

(ヒュ〜、子猫ちゃん天蓋付き〜)

今度は巧とビデオ通話している

「お嬢様だからね」

(良いね〜その冷めた感じ)

「意味不明」

(昨日は愛と一平さんも来てたって?)

「鬼が四人も居たわよ」

(それに動じない子猫ちゃん可愛い)

「鬼の要塞にも行った」

(どうだった〜?)

「桜が咲いてる時に行きたかったわ」

(来年は見られるよ。ものすごーーーく綺麗だから)

「尋は掃除が大変って」

(尋が言いそうだね)

「うん」

(あの桜は紅太さんの特別なんだ)

・・・特別な桜って何?

(来年は俺達のとっておきの桜も見に連れて行ってあげる)

「来年のことを言うと鬼が笑うわよ」

(じゃあ俺、笑っとく〜)

「馬鹿」


フフと笑えば巧も笑って
くだらないやり取りに気持ちが緩んだ


コンコン

「お嬢様、皆様お揃いです」


中谷さんが呼びに来るまで巧の顔を見続けたお陰で母様と食卓を囲む時間を耐えられそうだ

「じゃあね、巧」

(了解〜)


終話ボタンを押すと鎧を纏った



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