鬼の棲む街



「フフ」


「・・・んだよ」


「紅太、可愛い」


「・・・チッ」


「なに?不安なの?」


腕の中から顔を上げると眉を下げた紅太が見えた


「あぁ、不安だ」


不安な気持ちは同じだった


「フフ」


「首筋の痕も双子との関係も知りたくないのに気になる」


「フフ」


「気持ちを推し量るより言葉が欲しい」


不安をちゃんと言葉にしてくれるのは私にとっての安心感に繋がる


紅太の不安な気持ちは私にしか解消できない


紅太の背中に手を回して密着すると


落ち着く香りを一杯に吸い込んだ


「誰かを好きになるのは初めてだから不安にさせたならごめんね?」


「いや」


「紅太のことが好きよ」


「・・・っ」


「紅太と一緒にいると温かくて、嬉しくて、幸せな気分になる
でもそれと同じくらい苦しくて泣きたくもなる
でもそれが誰かを想うってことなのね」


「・・・あぁ、そうだな」


「それから双子とのこと・・・
強引にキスはされた、でもそれだけ
巧は二度もピンチを救ってくれた恩人」


「そうか」


「首筋の・・・これは・・・首筋だけじゃなくて多分全身にある
白に閉じ込められていた間、人形みたいだったから
戻って来た夜に汚れてる気がして何度も、何度も擦ったけど消えなかった・・・っ」


思い出すだけで涙が込み上げてくる


「小雪、悪い。泣かせたい訳じゃない」


「ううん、大丈夫
巧が虫刺されだからそのうち消えるって」


「・・・そのうち消えるって見たのか?」


「あ、と、うん?」


「どこで?」


「え・・・と、バスルーム?」


一瞬でブリザードが吹き荒れて一気に部屋の温度が下がった


「で?」


「一緒に入った訳じゃないのよ?
痕を見てパニックを起こした私を止めてくれた、みたいな?」


言い訳が早口になる私を


「キャ」


ソファに押し倒した紅太は


「ムカつく」と首筋にチリと痛みを加えた






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