鬼の棲む街
嫉妬も独占欲も気持ちの入った相手ならこんなにも嬉しい
「フフ」
「・・・テメェ」
鬼の怒りを更に買ったらしい私は水疱瘡より酷い斑点を付けられることになった
「クク」
気が済んだのか上機嫌な紅太に起こされると
ワンピースの胸元のボタンは二つも外されていた
慌てて留め直し紅太を睨む
「・・・っ、バカっ」
全く動じない紅太は口元を緩めて
「あぁ、バカでいい」
って片眉を上げるから
最後はお互い吹き出して笑った
・・・
言葉を交わす訳でもなく
ただ、一緒に居る
紅太のそばは居心地が良い
隣に座る紅太は相変わらず難しい本を読んでいて
私は愛とメッセージのやり取りの真っ最中
[告白された]
[紅太ね]
なんで分かるんだろう
[そう]
[返事はしたの?]
[うん]
[許可申請出てないけど]
[伝えるわ]
[そうして]
[どうして分かったの?]
[最初から紅太だと思ってた]
[最初って?]
[紅太が小雪を助けた土砂降りの日]
[うそ]
自分の気持ちさえ知らなかった頃
[プレゼントしたピアスはその日に注文したものよ?]
[完敗だわ]
[だから“赤”いピアスなのよ]
そんな意味があったなんて・・・
[赤鬼の“赤”?]
[赤は紅太の色だからね、龍神会で赤を身に付ける意味は重いのよ?]
[迎えは巧を来させたのに?]
[でも、好きにはならなかったでしょう?]
[確かに]
[吊り橋効果で流されるようなら、それまでってことよ]
私は色々な場面で試されている
[降参]
[ちなみに紅太とお揃いよ]
[え]
[近いうちにご飯行こうね]
[楽しみにしてるね]
やり取りを終えて顔を上げると紅太と目が合った
「楽しかったか?」
「うん」
「そうか」
「愛からの伝言。『許可申請が出てない』って」
「クッ、そうか」
「パパにも言う?」
「あぁ」
「それから」と紅太との距離を詰めて耳に手を伸ばす
気付いていなかったけれど同じピアスがあった
「お揃いって知ってたの?」
「あぁ」
穏やかな二人の時間は
気がつけば手を繋いでいて
ドキドキよりも温かい時間になった