鬼の棲む街
居場所

紅太の左手と私の右手
長い指に自分の指を絡ませてみる

それだけで頬が緩みそうになるって重症じゃない?

それにしても


「紅太って煙草吸ってたよね?」


「あぁ」


「全然匂いしないけど」


「やめた」


・・・え


「そんな直ぐにやめられるものなの?」


「・・・苦じゃない」


簡単じゃないけど堪えられないほどでもない、というところだろうか


「小雪、嫌いだろ?」


「私のためなの?」


「あぁ」


・・・狡い

そんなこと言われたら吸っても良いよって言いそうになる

折角の努力を邪魔したくないから繋いだ手に視線を落とした


その指に、ふと思い付く


「紅太は無いのね」


「ん?」


「ここ」


左手の薬指に触れる


「エルか?」


「うん」


「愛のことを“エル”と呼ぶのは南の街のLーDragonの面子だけ
俺にとっちゃ、愛は愛のままだ」


「そっか」


「小雪って入れるか?」


「・・・消せないんでしょ?」


「だからだろ」


始まったばかりの恋に未来をくれる紅太


「気持ちだけで良いわ」


「じゃあ指輪にするか?」


「・・・え?」


「お揃いを買いに行くか」


甘い空気を出す乙女な紅太に頬が緩む


「お揃いとか、初めてだから・・・嬉しい」


言いながら真っ赤になる頬を俯いて隠そうとしたのに


顎を引き上げる紅太の手が阻止した


こうなったらやぶれかぶれ


「紅太は私の彼氏になったの?」


「ん?」


「気持ちを伝え合ったらカレカノになるの?」


「ん、たぶん?」


「なによ、それ」


「俺も付き合うのは初めてだから分かんねぇ」


「フフ」


「、んだよ」


「お互い初心者ってことで良いでしょうか?」


「あぁ」


「じゃあ紅太、私と付き合う?」


得意顔で片目を閉じると


「それは俺の台詞だろうが」


絶対零度の睨みを寄越す紅太は
そう言った後、悔しそうに


「付き合う」と吐き出した


「フフ」


「よろしくね?」


「あぁ」


「てか、紅太って何歳?」


「クッ、そこからかよ。27歳。小雪とは九つ違い」


「お互いのこと・・・ほぼ知らないよね」


「あぁ」


「自己紹介から始める?」


「それも良いな」


「フフ」


くだらないやり取りが幸せって


バカップル



「フフ」









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