鬼の棲む街



双子が開いた両扉の真ん中を紅太は私の手を引いて優雅に脚を進める


途端にどよめく会場は

縦長い会場の壁際を埋めるように
コの字形に一人掛けソファが並べられている


そこに座ったまま探るような鋭い視線を向けてくる厳ついさん達


その中に三人ばかり女性が見えた

確か、出席者のリストに女性の名前は無かった

よく知らないけど組長の代理だろうか?

なるべく両側を見ないように進んだ先の上座には四脚のソファが並んでいた


双子は迷わず両端に座った

そして本来ならば真ん中だったであろう少し大きなソファに腰掛けた紅太は


「小雪」


低い声で私を隣に呼んだ

クルリと身体を翻しソファに腰を下ろすと途端に飛び込んできた厳つい面々に息を飲んだ


・・・怖っ


正面に伸びる歩いてきた道
その両脇に座る面々は会が始まるのを固唾を飲んで待っている


鬼の斜め後方に立った紅太の側近が挨拶をすると


「親父、そちらは」


真っ先に声を上げたのは横並び席の先頭に座っている年配の男性だった


その声を皮切りに


「儂等、何も聞かされてませんが」

「どういった関係で」

「まさか女《いろ》じゃないですよね」


次々に声が上がる


急に私が同席したから気を悪くしたのかもしれない

愛に応援されて上がった気分が萎みそうになる


そんな私の手を握った紅太は


「田嶋小雪、俺の女だ」


肌がゾワリと波立つような低い声を放った


一瞬で水を打ったように静まる会場も


次の瞬間には


一気に騒めき始めた




「「「・・・田嶋?」」」






< 185 / 205 >

この作品をシェア

pagetop