鬼の棲む街



「そのうち会うかもね?」


なんとなくそう思った

駅からクラブまでは徒歩圏内。バッタリ出会す可能性は高いと思う


「やっぱりクラブ行ってみよう」


紗香は顔を上げて笑ったから


「うん」


それに微笑み返したら


「ところで小雪、なんで鬼を知ってんの?」


終わったかに思えた話が急に戻ってきた


「えっと」


“耳にしたの”って答えたはずなんだけど。それでは不十分なのね


「えっと?」


興味津々と目を輝かせていて

この後の追及から逃れられないと諦めて


「会ったの」


そう覚悟を決めて告白したのに


「っ」


紗香は鳩豆顔で固まってしまった


「え、なに?そんなに驚く?」
こっちの方が驚きだ


鳩豆顔のままで口を開けた紗香は


「別次元の話で交わることなんてないと思ってたわ」


「交わるっていうか・・・遭遇したって感じだけど?」


「どの鬼と?」


「どの鬼?」


「南の街には赤鬼とそれを支える双鬼がいる」


「えっと、赤鬼、かな」


「どこで?」


「ん?」


「だから何処で遭遇するの?赤鬼に」


更に窮地に追い込まれたところでアッサリと白旗をあげて


雨の日の出会いとアルバイト。イタリアンの後に絡まれて助けられたことまでを話した


「・・・」


聞き終わった紗香は呆然とした様子で


正気に戻るまで携帯でも確認しようかと取り出せば


「っ」


白からのメッセージ通知の多さに心臓が嫌な音を立てた







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