鬼の棲む街
CLUB Dragon


「てことは、アルバイト先の杉田さんって龍神会かなぁ」


首を傾げた紗香はブツブツ呟いている


「西の街で喫茶店やってたって言ってたよ?隠居したくてあの店を買ったって」


そういえばと口にしてみた


「隠居?喫茶店やってたのに隠居って変じゃない?
喫茶店から喫茶店じゃ隠居とは言わないよね?」


納得するかと思ったのに紗香は矛盾にも気づいた


・・・そう言われてみればそうかも


「龍神会の何かをしていて、それの引退で南に店を買って引越してきた
それなら赤鬼が知り合いでもなんら問題ないよね」


でも、見るからに喫茶店のマスターだった

・・・それが龍神会と繋がってる?


「アルバイトが始まったら聞いてみる」


もうそれしか思いつかない


だって・・・


「異世界のお話みたいなんだもの想像の範疇を超えてるわ」


例え西の街で杉田さんが裏社会と繋がっていたとしても『隠居』したはず

それに・・・
赤鬼に『頼む』と言われただけで
ずぶ濡れで熱を出した見知らぬ私を看病してくれた

私の知る限り杉田さんは優しくて素敵な人

憶測だけで語りたくない

その気持ちが伝わったのか


「それもそうね」


紗香は眉間の皺を解放した


「それより!Dragon・・・凄く楽しみになってきた〜」


吹っ切れたようにテンションを上げた紗香にフフと笑ったところで漸く小声の話が終わった



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