鬼の棲む街
リセット




微かに聞こえる通知音



この音は・・・メールだ


じゃなくて


携帯電話は昨日電源を落としたままだから私のじゃない


明け方まで離して貰えなかった気怠い身体に鞭打って白の気配を探してみるけれど

シーツに残るのはハーバルの香りだけ

寝室には私一人のようだ


どうにか起き上がってガウンを着るとリビングへと繋がるドアを開いた


「・・・」


シンとしたリビングを通り抜け廊下に出てバスルームも覗いてみる


そのどこにも白は居なくて結局玄関まで来てしまった


そこは私のブーツしか無かった


リビングに戻ってみると携帯電話がテーブルの上に見えた


「・・・ん?」


確か昨日は電源を落としてから寝室の充電器に繋いで出掛けた


だから此処にあるはずがない


でもこれは間違いなく私の・・・


考えられることは一つしかなくて複雑な思いが交錯する

手を伸ばして取った携帯電話はロックを開いた瞬間メールアプリが開いていた


「・・・」


並んだ紅太の名前は丁度一時間前の受信からしかない

これまでのやり取りまで消されていてメールボックス内の送信ボックスとゴミ箱も空になっている


「・・・どう、して」


考えても答えなんて出ないばかりか白に対しての不信感しか生まれない


大学へ通うようになってから

白と離れた距離の分だけ

白を想う日は少なくなった


それは友達が出来たこともあるし
栄星学園での苦しい日々を忘れたい気持ちがそうさせている気がする


考えたくもないけれど


白はこれまでと同じ。いや、これまで以上の関係を望んでいるんじゃないだろうか

旅行に誘ったり、メッセージの返事がないことに過剰反応してみたり

約束もしていないのに突然現れたり


ドライな関係だと思っていただけに頭の中は酷く混乱していた


































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