鬼の棲む街


快晴の日曜日

ご飯も食べず

ソファの上で膝を抱えたまま、これからどうするかを考えていた

考えて、考えて、出した答えは


ずっと拠り所にしてきた同志としての感情しか持たない相手を切ることだった



「父様、お願いがあります」



ストーカーに悩まされていると訴える私の思惑に


(小雪の身を守るのが優先だから小雪の言う通りにしよう)


父様は二つ返事で承諾してくれた


そこからは驚く速さで状況は変化し二時間後には基がお手伝いさんと引越し業者を伴ってやって来た


「大変でしたね」


此処に越して来た時にもお世話になった実家のお手伝いさんは

父様から話を聞かされたのか私のことをとても心配してくれて殆どの荷造りを一人でしてくれた


そして更に二時間後には引越しが完了していた

とは言っても
元々ツインタワーだったマンションの西側から東側へと引越しただけだから

棟内移動みたいなもの

ただ東棟は分譲だから更にセキュリティが上がる

その登録に時間がかかった

今回は偶々分譲を賃貸にしている物件があったという偶然で叶った引越しだった

そして・・・
既に契約が切られて使えない携帯電話は初期化した後で基へ預け、引き換えに新しい携帯電話が渡された


「警察へは届けたのか?」


「ん、とりあえずは」


そもそも嘘だからボロが出ないように曖昧に流す


「何かあってからじゃ遅いんだからな」


「うん」


「お嬢様、お夕飯はいかがいたしましょう」


無理を言って来て貰ったから、お礼も兼ねてご馳走したい

ま、私のお金じゃないけどね、なんて誘ってみると


「「え」」


二人揃っての鳩豆顔に私が驚く
そんなに意外なのかな?

使う気のない空のキッチンでは、お手伝いさんと言えども何も出来ない

有無を言わせず三人で外へと出た

何にもしていないけど色々あり過ぎて心身ともに疲れたから美味しいものでも食べなきゃやってらんない

昨日より静かな繁華街の大通り沿いに建つホテルのレストランに入った


「お嬢、様、私汚い格好ですっ」


焦ってオロオロするお手伝いさんは“汚い”ではなくて地味な格好をしているだけ


「引越しだったんだもんね」


気にしなくて良いようにと個室をお願いした














< 62 / 205 >

この作品をシェア

pagetop