鬼の棲む街



ーーーーーその頃赤鬼は

朝、不可解な返信が来たのを最後にパタリと鳴らなくなった携帯電話を握りしめていた


夜まで待って電話を掛けよう

そう思ったことが知らなくても良い感情を呼び覚ます


(おかけになった電話番号は現在使われておりませんーーーーー)



溢れる感情そのままに携帯電話を床に投げ付ける

そんなことではビクともしない携帯電話を拾えば

『カバーまで黒なのね』
そう言って笑った彼女がまた頭に浮かんで

苛々した気持ちを抑えきれず夜の街へ飛び出した








・・・






基と世話係のお手伝いさんを見送って部屋に戻ってきた私は新しい携帯電話をカスタマイズすることにした


動揺し過ぎて・・・
紅太からのメールを開かないまま初期化してしまった


何て書いてあったんだろう
雰囲気とは真逆で癒しにさえなっていたやり取り

絵文字もないそれは短い言葉なのに違う意味で破壊力があった

その残念な気持ちを抑えて記憶の中の番号を押した


(・・・もしもし?)

登録していない番号からかかってきた電話に警戒感を含ませながらも出てくれたその人は


「私・・・小雪」

(え?小雪?モォォォォ!メッセージアプリからは消えてるしメールは知らないし電話は繋がらないから
どうしたかと心配してたんだからぁぁぁぁ)

息継ぎ無しに一気に喋り出した


「フフ、ごめんごめん」

(もぉ、笑い事じゃないよ)

「色々あって携帯を新しくしたの急ぎだったからメッセージも送れなくてごめんね?」

(そうなんだ、まぁ、無事なら良いよ。IDは、明日で良いね)

「うん」

(明日の朝、マンションの外で待ってるね)

「うん。ありがとう」



そのまま連絡先を登録した


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