鬼の棲む街
嫉妬が起こす脅威
「・・・痛い」
月曜日の赤ワインの所為で
火曜日の朝は完璧なるグロッキー
週末には父様からの迎えが来て重いGWを実家で迎える
だから、頑張れ私
気合いを入れて起き上がると熱いシャワーで目を覚ました
紗香から大量に届いているメッセージに
[これから行く]と返事をして
いつもより念入りに化粧をした
・・・
エレベーターを待ちながら双子を思い出し、上から降りてくるのに気をつけようと思った
そして
エントランスを抜けて大通りを歩き始めた途端に
キキーーーーッ
黒光りする大きなセダンがタイヤを軋ませて歩道を歩く私の目の前に突っ込んできた
「・・・っっ」
風を感じる程の近さに恐怖で動けなくなる
ドアが開いたと思った瞬間強い力に引っ張られ後部座席に引き摺り込まれた
「・・・っ」
口を開いて閉じて・・・
あまりの恐怖に声さえ出てこない
「へぇ、美人だな」
血が止まりそうな程強く腕を掴んだその人は粘着質な視線を寄越してきた
ゾワリと背筋を走る寒気と恐怖に一瞬で身体が小刻みに震えて歯までもカチカチと鳴る
「震えてる」喉を鳴らして笑う男は
「一先ず倉庫な」
運転手へとそう告げると掴んでいた手を離した
「余計なことを考えるなよ?ドアは内側からは開かねぇし大人しくしてたら“今は”手を出さねぇ」
アッサリ捕まえた割にアッサリと離れたのには理由があった
とりあえず、この事態が把握出来ないうちは従うしかない
子供の頃から聞かされていたこと
もしも誘拐されたら・・・の件を思い出して
震えながらも座り心地の良いシートに背中を預けた