十六夜月と美しい青色
 お腹が満たされてくるのを感じると、思い出したように鞄からスマフォを取りだした。そして、トークアプリを立ち上げ、高校からの親友の真琴に、今日あった出来事を報告がてらメッセージを送った。

 親友の反応は、素早かった。突然、スマフォが鳴り出し、真琴の名前が表示されているのだ。

 「ちょっと、どういうことよ!!!婚約破棄なんて!結納も済んでたじゃない?会社の方とか、大丈夫なの?きっと結花のことだから、一人で現実逃避中でしょ!なんでもっと早く電話してこないのよ!いくらでも愚痴なんて聞いてあげるのに!」 

 「ゴメン…。」

 「もうぉ~、ナニ言ってんの。結花が一番辛いんだから。また時間作るから、話せるようになったらちゃんと話してね。それに、いい!?今日は馬鹿なこと考えずにちゃんと寝るのよ!どうせ、いつものペンションでしょう?流石に私じゃそこまで行かれないから、明日、気をつけて帰っておいでよ。」
 ここには、時々一人で来てることを、親友の真琴にだけは話したことがあった。

 「うん、わかった。ありがとう。」
 
 そんなやり取りをしばらくした後、電話を切ると、母からのメッセージが届いていた。

 「了解!今後の事は、全てお父さんが対処してくれます。結花は何も心配しなくていいからね。
 せっかくのペンションなら、温泉にでも入りに行ってリフレッシュしてきなさい。もっと、素敵な女性になって、あのバカなボンボンのこと見返してやりなさい(笑)」

 母からの、少しだけ乱暴な文面に、笑みが溢れた。それでも、道理の通らないことが誰よりも許せないあの母の事、私の居ないところで、凌駕の家族にこんな不義理は許されないと、追い詰めたんじゃないかと思った。それを、全く見せる素振りのないメッセージに、感謝の気持ちで一杯になった。

 凌駕からのメッセージも、沢山届いていたけれど、流石に見ることなく削除した。
< 8 / 46 >

この作品をシェア

pagetop