ずっと好きだった。
「じゃあ、俺も一緒に行くよ」
「いえ、それは――」
「俺はあいつと同期で、どんなやつかはある程度知っているつもりだよ。だから一人で別れ話をさせるつもりはない。もし傍にいないほうがいいなら、鍵は開けたまま、スマホも通話中のままでいてくれ。近くで待ってるから」
「……わかりました。ありがとうございます」
今まで彼に殴られたことはないけれど、怒鳴られたことは何度もある。
だから課長の言葉は心強くて、でも情けなくて恥ずかしくて。
それでも甘えてよかったと後になって強く思った。
別れ話を切り出したら本当に彼は逆上して、殴られてしまったから。
すぐに課長が駆けつけてくれたから、顔を庇った腕に大きな痣が一つできただけですんだ。
彼は課長が現れたことでもっと怒ったけれど、威嚇だけで結局は捨て台詞を吐いて逃げていった。
その後、課長は私の腕を見てすごく後悔していたみたい。
悪いのは彼で、私の判断の甘さが招いたことなのに。
休み明けから社内では陰湿な噂を流されたりもした。
だけど課長と彼とでは社内での信頼度も全然違って、私もそれほど嫌な思いをすることはなかった。
そのうち噂も消えて、彼が女性問題で事実上左遷されて、色々と落ち着いた頃。
私と課長は結婚した。
本当はあの夜にはもう課長のことを好きになっていたのは言うまでもないよね。
ただいい子ぶって自分に嘘を吐いていただけ。
前に進めないなんて言いながら、とっくに走り出していたのに。
あの夜から、ずっと好きだった。
こんな優柔不断の私のどこを好きになってくれたのかはわからないけれど、終わらない幸せを約束してくれたように、私も約束したい。
「私も……」
「うん?」
「私も、この幸せを終わらせたりなんてしませんからね」


