運命なんて信じない
ピンチ!ピンチ!
報道から2週間が過ぎた。
結局、保健所の検査でも異物は発見されなかった。
世間も、悪戯だったんじゃないかと思い始めているし、おじさまも賢介さんも自宅に帰れるようになり、やっと普段の生活に戻った。

「藤沢」
社員食堂で、珍しく翼が声をかけてきた。

「どうしたの?」
最近は仕事が忙しくて、会うのも久しぶり。

「騒ぎも大分落ち着いたみたいだな」
私のとなりの席にに座る翼。

「このまま終息してくれればいいんだけれどね」
「そうだな」

ランチの天津飯と棒々鶏を食べながら、私はチラチラと翼を見る。

「で、何?」
目立つことが嫌いな翼がわざわざ私に近づいてくるってことは、何かあるに違いない。
それが気になった。

「それなんだが・・」
翼は持っていた持っていたコーヒーを置いた。

そもそも、翼が人前で声をかけてくることは珍しい。
見た目は誰が見ても100点満点。
整った顔とスマートな身のこなしで、仕事が出来るくせに寡黙なところが年上お姉さん達にも人気がある翼。
そんな人と一緒にいれば嫌でも目立ってしまう。
翼もそれが分かっているから、わざわざ接近したりはしないはずなのに・・・
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