運命なんて信じない
「あなた達、随分目立ってるわね」
今度は麗が現れた。

「麗に言われたくないわよ」
あなただって、十分存在感を醸し出していますよ。

出来れば、私はこの場から逃げ出したい。
この2人といると、周りからの視線が痛い。

「翼の用事って、美優のこと?」
席に着いた麗が、翼に訊く。

「ああ」
翼が頷いた。

何?
「どういうこと?」

「これよ」
麗が携帯を差し出した。

えっ。
その画像を見た私は、絶句した。

「何、これ?」
やっと出た言葉がそれだった。

麗の携帯に映っていたのは美優さんの顔。
それもただの顔写真では無くて・・・
唇から血を流し、目は腫れ上がり、頬にはいくつもの切り傷。
これって、DV 写真だ。

「ねえ、一体どういうことなの?」
私は状況が理解できず苛立った声を上げてしまった。

「琴子、落ち着け」
翼に言われて、さすがに周りを見る。

どうやら声が大きくなっていたらしく、周囲の注目を集めてしまった。

「ごめん。で、何なの?」

「写真のタイトルは『デートDV』。どうやら賢兄にやられたって言いたいようね」
麗もあきれ顔だ。

はああ?
「何馬鹿なこと言ってるのよ。賢介さんがそんな事するわけないでしょう?」
また、私の声が大きくなる。

「賢兄がそんな人じゃないことぐらい分かってるわよ。でも、美優はそう主張しているの」
どうやら麗も怒っているらしい。

何で・・・こんな馬鹿なこと・・・
美優さんは一体何がしたいんだろうか?

「その写真。立花は誰にもらったの?」
翼も自分の携帯から同じ写真を見せながら訊く。

「モデル時代の友達からもらったのよ」
「俺は、バイト時代の仲間から」

二人が別々に手に入れているって事は、広まるのも時間の問題。

「賢兄に、知らせる?」
麗が私の顔を覗き込む。

「いいえ。まずは、美優さんに事情を聞きたい」
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