運命なんて信じない
幸せな時間は早く過ぎるもの。
片付けをしたり、少しずつ荷物をまとめたり、仕事の整理もしたり、私な残された時間を惜しむように過ごした。

「琴子ちゃん。今日は遅いの?」
出かけていく私にかけられたおばさまの声。

最近金曜日の定番になりつつある麗たちとの飲み会。
でも、今日だけはいつもと違った。

「麗と一緒に食事に行って、泊まってこようと思うんです。明日は早めに帰りますから」

「え?泊まってくるの?」
おばさまが台所から顔を覗かせた。

「はい。明日は土曜日だし、見たい映画のDVDを手に入れたらしいので」
ちょっと言い訳っぽいかな。

「分かったわ。飲み過ぎたらダメよ」
「はい」

元気に手を振り、私は平石の家を出た。


会社のロッカーも机の中もこっそり片付けた。
制服もクリーニングに出し、社員証と自宅の鍵を封筒に入れてポストに投函。



そして午後7時。
ホテルのレストランに到着した。
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