運命なんて信じない
午後になって、私達は平石の家に戻った。
1週間ぶりの帰宅に、緊張で足が震える。

「大丈夫だから」
キュッと手を握られて、私は歩き出した。

ピンポーン。

ガチャッ。

「ただいま」
賢介さんが声をかけ、

「お帰りなさいませ」
喜代さんが顔を出した。

その途端、
「こ、琴子さん」
絞り出すように言うと、
「奥さまー。旦那さまー」
叫びながら走って行った。


「行こう」
賢介さんが手を引いてくれるけれど、

私は玄関から動かない。
これだけのことをしたんだもの、勝手に上がるわけにはいかない。
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