運命なんて信じない
俺が琴子を初めて知ったのは中一の頃だった。
お母さんを亡くし一人泣き続ける当時4歳の琴子が、愛おしくてたまらなかった。
父さんも母さんもそのまま家に引き取りたがったが、琴子のお母さんとの約束で、二十歳までは陰から援助することとなった。

それからは、事あるごとに琴子の様子を見に出かけた。
いつも陰から、そっと成長を見守ってきた。
琴子自身に記憶はないだろうが、俺は小学生の琴子も中学生の琴子も知っている。

おとなしいくせに芯が強くて、頑張り屋の琴子。
多少ぐれた時期があったことも承知しているが、陰から見守る約束もあって表立って動くことはできなかった。
もちろん、警察沙汰になるようだったり、学校に行けないほどのことがあれば出て行くつもりだったが、琴子はちゃんと成長してくれた。
そもそも、反抗期の時でさえ俺にとってはかわいい琴子でしかなかった。
そして、大学を卒業し家にやって来た琴子をもう手放さないと決めたんだ。
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