恋人ごっこ幸福論
もう集まってストレッチか何かしてるのかな、今のところ他校のバスケ部らしき人達がお昼食べたり各自で準備している姿しか見られない。
きょろきょろしていると、うちの高校のジャージ姿の人も見かけたがまだ時間に余裕そうに過ごしている。スタメンの人か分からないけどまだやっぱり大丈夫なのかな…。
試合前に練習1人でしてるのはさすがにないよね、と人気の少ない木陰道を見つける。所々ベンチの置いてあるその周辺を進んでいくと、その1つに彼の姿を見つける。
肘をついてスマホで何か見ている彼にそっと近寄る。
「イメトレですか」
声をかけると、ちらっと視線だけこちらに向いた。バスケの試合動画が流れている。
「…まあ、そんなもん」
それだけ言ってまた動画に集中する橘先輩。いつも素っ気ないけど、今日はやっぱり様子がおかしい。
だって隣に座ってじっと見てても面倒そうにされないし、なんならまだこんな近くにいるのにそれすら気づいていないようだ。
「それ、対戦相手の高校の試合動画ですか?」
「!なんでまだいんだよ」
「…やっぱり気づいてなかったんですか、ずっと隣にいたのに」
本当にどうしちゃったんだろう、らしくない彼が心配になってつい見つめてしまうと罰が悪そうにして、落ち着かない。