恋人ごっこ幸福論
「緊張するほど何かうまくいかないことでもあるんですか…?」
これ以上詮索したら怒るかな、そう思いつつ恐る恐る問いかけるとちょっと困惑した顔をしつつも答えてくれる。
「体調は万全だし問題ねえよ。ただ」
「ただ?」
「…初戦の対戦校、つい最近練習試合で去年の優勝校に大差つけて勝ってんだよ」
「え…」
「今まで大したこと無かったからまぐれだってうちの奴らは言ってたんだけど。午前中に優勝校の方観たけどまぐれで勝てるようなレベルじゃなかった。となると、正直今日の試合はうちレベルだとかなりまずい……油断し過ぎてた」
「……なるほど」
よりによって今日、強いところが集まっている日なんだ。一試合でも多く先に進みたい、って言っていた橘先輩からしたらチャンスが潰されたような気持ちなんだろう。運も実力の内、とはいえ最初から実力差が大きい相手だとプレッシャーの大きさは底知れないのかもしれない。
「だったら、尚更緊張解かなきゃ…!せっかく身体は問題無くても万全で出れませんよ」
「分かってるよ!だから集中してんだろ…とにかく相手のスタイル理解するのと、なんでもない振りするように」
「今日会った時から全然できてませんよ!」
はっきりそう言うと、黙り込む。
そっか、本人は平常心保とうとしているつもりだったのか。確かに普段から表情豊かな訳でもないし、気づかれないと思ったんだろうけど。