恋人ごっこ幸福論
「つーか、なんで緊張してるってわかんだよ」
「?だってなんだか元気なさそうだったもん。菅原先輩だって全然ご飯食べてないって言ってたでしょう」
「それは、……悪かった、けど」
あまり食べなかったことを申し訳なかったと思っていたのか、言い返す前に謝罪の言葉が出てしまう彼は、もう強がる気力も無くなったのかそのままぷいっと顔を背けてしまった。
別にお弁当のことは気にしていないんだけどな、様子を窺おうと彼の顔を覗くと少し恥ずかし気にしていて。
「…そもそも、試合前に萎縮してしまうようじゃ駄目なんだよ。どんな相手だろうと抜群のコンディションを出せねえ甘ったれじゃ出る資格ない。分かってて一生懸命そうじゃないんだ、立て直せんだって持ち直そうとしたけど結局何もできてないし」
「せんぱ、」
「つーか…こうやって神山に愚痴ってるとかダッサ。あー!もうまじでダッセー!!」
「…橘先輩、落ち着いて」
珍しく大きな声を出した後、彼はそのま溜息をついて黙って俯いた。
凄く、落ち込んでる。いつだって冷静で、動揺することなんてないんじゃないかって思ってた彼の意外過ぎる一面。
本来、こういった思いはチームメイトとかにぶつけたりするものなのかもしれない。けれど彼は真面目で、努力家で、その分誰よりも自分に厳しくあろうとしている。
そのプライドが、こういった事態に陥った時自分自身を傷つけてしまっているんだ。