恋人ごっこ幸福論
でも、やっぱり隣にこうやって並んで一緒に帰れるのは嬉しい。高校生って感じがするなあ。
すれ違っていく同じ高校の生徒達に「彼女居たんだ」「見てあれ」と物珍しそうに見られてしまうことが少し恥ずかしいけれど、それでも少しはこの関係にも慣れてきたし、以前よりは堂々と居られそうな気がする、多分。
「後ろめたそうにしてんな」
「こんなにちらちら見られたらなりますよ」
「確かに。注目されてんじゃん」
他人事のように軽くそう言う彼は、気づいているようだが気にもしていない。
言われてみれば慣れっこだもんね。いつも見られているのが普通だというのも大変そうだけれど。
「変に絡んで来る奴とか居なけりゃ無視でいいんだよ。面白がってるだけだし」
「そうは言っても気になりますよ…釣り合いだって取れてないし」
「取れてないことないと思うけど。恋人になりたがっといてそんなもん気にするのおかしくね」
う、まさしくそうだ。
確かに自分からアピールしておいて、いざ恋人になれたら釣り合わない、なんていうの良くないし、失礼だ。
「え、彼女…?」
「いや、あれは本気じゃないっしょ」
「………」
通りすがりの学生がぼそっと口にした言葉が耳に入ると、やっぱり自信なくしてしまうけど。
「無視でいいんだよ」
「わ、分かってます!」
哀れみのような目で再度言われると、さらに辛いです。