恋人ごっこ幸福論




でも、やっぱり隣にこうやって並んで一緒に帰れるのは嬉しい。高校生って感じがするなあ。

すれ違っていく同じ高校の生徒達に「彼女居たんだ」「見てあれ」と物珍しそうに見られてしまうことが少し恥ずかしいけれど、それでも少しはこの関係にも慣れてきたし、以前よりは堂々と居られそうな気がする、多分。



「後ろめたそうにしてんな」

「こんなにちらちら見られたらなりますよ」

「確かに。注目されてんじゃん」



他人事のように軽くそう言う彼は、気づいているようだが気にもしていない。

言われてみれば慣れっこだもんね。いつも見られているのが普通だというのも大変そうだけれど。



「変に絡んで来る奴とか居なけりゃ無視でいいんだよ。面白がってるだけだし」

「そうは言っても気になりますよ…釣り合いだって取れてないし」

「取れてないことないと思うけど。恋人になりたがっといてそんなもん気にするのおかしくね」



う、まさしくそうだ。

確かに自分からアピールしておいて、いざ恋人になれたら釣り合わない、なんていうの良くないし、失礼だ。



「え、彼女…?」

「いや、あれは本気じゃないっしょ」


「………」



通りすがりの学生がぼそっと口にした言葉が耳に入ると、やっぱり自信なくしてしまうけど。



「無視でいいんだよ」

「わ、分かってます!」


哀れみのような目で再度言われると、さらに辛いです。





< 120 / 304 >

この作品をシェア

pagetop