恋人ごっこ幸福論
「ああ、さっきの脅しは冗談な。そもそも俺にそんな権限ねえし」
「え!? 」
「そうでもしねえと俺の本気は伝えれねえと思ったからさ」
「だからってお祖父ちゃんの事出すのはひどいよ!私本当にどうしようかと思って、」
「ごめんな。緋那にどうしても付き合ってほしかったんだ」
熱っぽい目を向けて申し訳なさげに笑う玲央ちゃんに思わずたじろいでしまう。じゃあな、と玲央ちゃんは私達を置いて先に去っていった。
玲央ちゃんの去っていく姿を見送っていると、凄く視線を感じる。
「た、橘先輩…」
この目はもしかして怒ってる!?そりゃそうだろうけど…。
簡単に騙されている私に呆れ返っているようにも見える彼にもう一度「本当にすみません」と謝罪すると、軽くデコピンされる。思わず額をさするとはあ、と先輩は溜息をついた。
「んな顔すんな、別に怒ってないから。抵抗できねえよう引っ張られてったって聞いたし、神山だけのせいじゃないだろ」
「先輩…」
「とにかくあまり周りに心配かけんなよ」
呆れつつもついへこむ私に同情したのか、優しく声をかけてくれる橘先輩に頷く。私は色々と考えが甘いんだろうな、先輩に迷惑かけてばかりだ。
騙されたのは私の責任だとはいえ、迷惑かけてしまったのは事実。ちゃんと反省しよう、と改めて思った。