恋人ごっこ幸福論
いつもそうだ、私の気持ちを伝えると気まずそうに視線を合わさない。
あれから何度経ってもこれだけは変わらないし、私の気持ちに何事もなかったかのように対応してくる。自分のことを好きじゃないのは知ってるし、すぐに返事が欲しい訳でもない。
でも一応アプローチしているのだから、さすがに何か反応があってもいいんじゃないか、と思ったりもしなくなかったり。
「…先輩、もしかして迷惑ですか?」
「迷惑、って何が」
「私が貴方のことを好きだっていうことです」
その時、彼の表情がわずかに硬くなったような気がする。本人だってやっぱり自覚あるんだ。痛いところを突かれたといった彼の目をじっと見つめて反応を待つ。暫しの間の後、橘先輩は溜息を吐き出した。
「…別に迷惑ではねえよ」
「ほ、本当ですか」
「ああ」
「じゃあ…なんで誤魔化すんですか」
気になってた核心に迫ると、冷めた目を向けてきて。
「お前が俺のこと好きだっていうのが信じられないから」
「え、」
「偶然自殺未遂助けたから親切で良い男だと思ってそういうこと言うんだろうけど、全然そんな奴じゃないし。噂されている通りの無愛想で素っ気ない冷たい男が事実だから。実際優しくしたことなんかその時以外無いだろ」
「そう…ですけど」
「だろ。だから誤解してる奴相手にしても意味ないと思ってただけ」