恋人ごっこ幸福論
「…先輩、」
だから、毎回誤魔化してくるの。
彼の答えについもやもやと言葉にならない感情が湧いてくる。確かに私は橘先輩のことをそんなに知らないと思う。でも本当に、本当に好きだと思っているのに。
「そんなに、私の好きって信じられませんか」
「ああ。俺には好きだなんて勘違いしているように見える」
勘違いなんかじゃない、こんなふうに思える相手初めてだけどそれは分かる。こんなに1人の人間の言葉や行動で一喜一憂することなんてなかったもん。
もっとちゃんと具体的に言葉にして伝えないと、貴方には分かってもらえないのだろうか。
「…いつも人一倍真面目に部活しているところが好き」
「は、」
「ミニゲーム中誰よりも周りをよく見て動いてるところも好き」
「…急に何言って」
「きついこと言ってる時は大体人の心配をしてるだけのところも、面倒くさいのに私が聞いたこときちんと答えてくれるとこも、無愛想で素っ気なくてでも実は優しいとこが、全部、全部好き」
「…無愛想で素っ気ないって欠点だけど」
「そんな欠点も好きなの」
つい言葉に力が入って、ぎゅっとカーディガンの裾を握りしめる。
橘先輩のことを見るようになってから、そんなに時は経っていないけれど私だってただ彼をぼうっと見ていた訳じゃない。