恋人ごっこ幸福論
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「うーん…」
「まーだ考えてるの。朝からでしょ」
「英美里ちゃん…」
「考えたってしょうがないよ。あの人そういう男なんだし」
「紗英ちゃん…」
私の両隣に立つ2人の顔をそれぞれ交互に見て、溜息をついた。
放課後の時間になっても今朝のことが消化できず、頭の中でぐるぐるぐるぐる考えて、溜息をつくのを延々と繰り返していた。
「詳しく何があったか知らないけど、いちいち傍でモヤモヤされたら気になってしょうがないでしょ。元々相手にされないとこからのスタートなんだし多少やらかしたって大丈夫でしょ」
「それはそうだけど…」
「じゃあ困ることないじゃない?何悩んでんのよ」
「う…」
確かに英美里ちゃんの言う通りだ。別に悩むほどのことでもない、分かってるんだけど。でも。
「(今のままだったら…まず意識すらしてもらえない気がする)」
彼は私が自分に恋愛感情を抱いていることを受け入れようとしない。
何故だか分からないけれど、その感情自体が違和感でもあるようにいつも壁を作ってくるんだ。彼がこれからもそうするつもりなら、きっとこのまま何かが変わることはない。
彼に、私が貴方を本気で思っていることを納得してもらえないと、きっと。