恋人ごっこ幸福論
「まあ橘くんも橘くんだしもうどうでもいいんじゃない?」
片方の先輩女子が急にぼそっと呟く。
「だって普段うちらに冷たいくせにストーカーしてくるこの子のことは受け入れてんだよ?うちらだって純粋に応援してるだけなのに差別じゃん。ストーカーの方が優しいなんて」
「確かに。あ、ストーカーちゃん可愛いもんね!可愛いから橘くんも特別に受け入れてくれてるんじゃん?」
「絶対そう!普段スカしてる癖して可愛い子は優遇とかマジないわ。失望した」
「ね~所詮自分も顔だけだしいいんじゃない?」
「(え…)」
つい唖然として、次々と出てくる彼女達の言葉を聞いてしまう。
この人達、私から橘先輩の悪口に切り替えたの?
私が、自分のことを言われてもうんともすんともしないから彼のことを悪く言えばいいと思ったの?
どのくらいかは知らないけど橘先輩のこと好きなはずなのに、それなのにどうしてその人のことをそんなに悪く言えるの?
私を怒らせるためなんだったらなんだってできるってことなのか、目の前の先輩女子の理解しがたい行為に抑え込んでいた感情が溢れ出しそうになる。
別に皆が皆良いと思う人じゃないし、英美里ちゃんや紗英ちゃんだって良くない印象を持っているみたいだし、彼をどう思ったって構わないと思う。
でも貴女達は好意的に見ていたんじゃないの。