恋人ごっこ幸福論
「…お前さ、なんでそんなに俺のこと好きだって言ってくんの」
「え、なんでって?」
「毎日会いに来て、いつもきついこと言われていたら普通嫌になるだろ。話す機会が増えれば尚更気づくだろうと思ったのに…なんで?」
そう言われたとき今まで彼が、わざと私が来ることを許していたのかと気づく。いっそのことしっかり自分と接触すれば、私も嫌になってくると思っていたんだろう。
そんなに、そんなに自分を好きになるのが不思議なのだろうか。
「ならないですよ」
ぽつりと、自然に言葉が零れた。どう、説明したらいいんだろう。前伝わらなかった貴方を好きだという私の思い。自分の中で具体的な理由を探したけれど、上手くまとめられない。
一言で伝えるなら、ふと浮かんだのはシンプルな言葉で。
「だって優しいもん」
「は?」
「あの日もだし…再会したときも“元気ならどうでもいい”って言っていましたけどそれは言い換えれば心配してくれてたってことでしょうし…それに、橘先輩よく冷たいって言われてるけどいつも周りのこと考えてくれてるもん。
いつも女の先輩達にきついこと言ってたのだって本当に危険だったからだし、言い方が良くないだけで優しいですよ」
誰がなんといっても私はどんどん好きになるばかりだった。
言い方がきつくても、みんなが彼は酷い人だと言っても、貴方がいなかったら私はこんなに毎日頑張ろうと思えなかった。