恋人ごっこ幸福論
「自分のこと言われても平然とへらへらしてんのに、俺のこと言われたら抗議してたんだって?」
「はい…だって、いくら何でも酷いんだもん」
「自分のことで抗議しろよ。俺のことはどうだっていいだろ」
「よくないですよ!それに私は言われ慣れてるから大丈夫です」
「言われ慣れてるって…つーかそもそも俺は事実日頃の行い悪いし言われたってしょうがないわ。なんならアイツらウザかったから嫌われた方が助かるしどんどん言ってくれて結構だったのに」
「橘先輩にとってはそうかもしれないけど…でも」
「でも?」
つい口ごもる私に聞き返す彼に、しっかりとその続きを伝える。
「…それでも、私は納得いかなかったんです。橘先輩は素敵な人だから」
「素敵な人、って…」
ぶれずに好意をまた伝えると、盛大な溜息をつかれる。
それは不快そうというよりは、これ以上は沢山だと言いたげな意味のもののようで。
さすがにいい加減好意を伝えられるのも鬱陶しくなってきたのかな。どぎまぎと彼の言葉を待っていると、暫しの間のあと思っていたよりも穏やかな声音で私に質問を投げかけてくる。