恋人ごっこ幸福論
***
そして、県予選当日。
「つ、遂に来た…」
予選が行われる県体育館に着くと、なんだか背筋がピンとする。
他校のジャージや制服を着た人達がたくさんいるこの場にいると、楽しみにしていた日がようやくやってきたのだと実感する。
「ひぃちゃんが出る訳じゃないのに何カチコチになってんのよ」
「本人らより気合入ってそうだね」
英美里ちゃん、紗英ちゃんは呆れつつもなんだかんだ一緒に来てくれた。
菅原先輩にお願いされたときは嫌そうにしてたのに、2人ともやっぱり優しいよなあ。きっと私1人だと心細いのも察してくれているのだろうけど。
「まだ午前終わってないっぽいからこの辺りで待っとくしかないね」
「うん、なんかそんな感じみたいね」
体育館の中から声援やらホイッスルの音が聞こえるし、この場に居る人達も試合が終わるのを待っているのだろうか。
午前の試合の後のお昼の時間に待ち合わせてお弁当を渡す約束をしているため、今はここで待つしかなかった。
「ひぃちゃんとりあえず橘先輩に連絡しといたら?スマホ見れないだろうけど」
「うん、そうだね。体育館の正面入り口出たとこにいる、て言ったら分かるかな?」
「分かるんじゃない、まだうちの高校の人少ないし」
「だよね」
じゃあそうしよう、今いる場所をLINEで送っていると、体育館の中からゲームセットのホイッスルの音が聞こえてきた。どうやら午前中の試合が終了したようだ。