【コミカライズ】黒騎士様から全力で溺愛されていますが、すごもり聖女は今日も引きこもりたい!
 一角獣の背で揺られるルルの気高く麗しい姿に、大聖堂に集まった人々は心を奪われる。

(みんながわたしに見蕩《みと》れてる。ノアに金貨を渡して、魔力をもらって正解だったわね)

 ジュリオが立つ演説席にたどり着いたルルは、ノアに抱きかかえられて背から降りた。

 枢機卿から敵意にも似た視線を感じるけれど、逃げ出したいのをぐっとこらえる。
 不安げな表情は、顔に垂らしたベールとキラキラな魔法のおかげで見えていないはずだ。

 ベールの下を暴こうと、ジュリオは演説席を下りて近づいてきた。

「いきなりやって来て、僕に挨拶もなしとは。君は何者かな?」
「わたしの顔をお忘れになったのね、ジュリオ第四王子殿下。修道院に入る前に遊んだこともありましたのに」
「修道院に入る前、ということは――」

 おどろくジュリオの横を通って演説席に立ったルルは、すうっと大きく息を吸った。

「わたしは、聖教国フィロソフィーの第一王女ルルーティカ・イル・フィロソフィー。王位継承権を持つものとして、ガレアクトラ帝国はジュリオ第四王子殿下の次なる聖王内定に異議を申し立てます」

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