禁忌は解禁される
「姫!?」
一颯は耳を塞いで、その場でうずくまる。
銀二は、一颯の元に駆け寄る。

「姫!?
大丈夫で━━━━」
「嫌!助けて!ママを連れて逝かないで!!
お願い!!」
必死に銀二にしがみつき、懇願する一颯。

あの時もそうだった。
大雨と、雷。
律子が敵対している組にさらわれ、殺された時も、雷が鳴る大雨の日だった。

銀二は一颯を抱き締め、必死に言い聞かせる。
「大丈夫です!もう誰も、姫の前からいなくなりません!!」
「ほんとに…?」
「はい、大丈夫ですよ。俺が……もう誰も死なせない……!!!」
「そう…だよ…ね……」
そのまま、気絶した一颯。

その一颯を抱き上げ、
「おい、ガキ共!」
「え…?」
「今回は見逃してやる。だが、もし次…同じことをしたら、命ないと思えよ………。
俺の顔、しっかり覚えとけ!」
そう言って、車に向かった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
家に帰り着くと颯天達は帰っていて、一颯の姿を見て驚愕する。
「いぶ……姉ちゃん!!?」
「姫!!?」
「申し訳ありません。昔のこと思い出して、倒れてしまって………」

「銀二…!お前がいて、なんで……」
「とりあえず、着替えて身体を温めないと……」
「俺がやる!」
颯天が奪うように、一颯を銀二から取って抱きかかえる。

「銀二さんも、着替えない……と……
………銀二さん?」

銀二は力なく、両腕をストンと下ろした。

その表情は、とても傷ついていて、苦しそうだった。


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