禁忌は解禁される
でも、言いかけた言葉を引っ込めた。

きっと颯天のことだ。
血の繋がりを話せば、すぐにでも籍を抜き、結婚しようと言い出すだろう。
そうなれば、本当にこの世界から一生抜け出せない。

この世界で生きているのだけは、どうしても受け入れられない。
母を殺したこの世界でだけは。

だったら━━━━颯天とは姉弟でいることを選ぶ。

「私達、姉弟だよ?」
「わかってるよ」
「お互い、一生…誰とも結婚せずに生きていくの?」
「そうだよ。姉弟だからって愛し合うことはできるよ?
結婚や子どもは無理だけど…」
「私は無理。
“普通”の幸せ掴みたい。
それにこの世界は嫌!
とにかく、私は明日お見合いするから!」

「だったら、俺は壊すだけだよ?」

「颯天に指図される覚えないし、邪魔しないで!
もう…出ていって!」


「━━━━━━じゃあ、抱かせてよ」


「━━━━━は?」

「俺、一颯を抱きたい!」

「じょ、冗談やめてよ…!」
「冗談でこんなこと言わないよ?
抱かせてくれたら、今日は解放してあげる」

「私達、姉弟だよ。無理に決まってんでしょ?」
「だから!この世界に禁忌は関係ねぇよ!」
颯天の真っ直ぐな目に、思わず目をそらす一颯。

「普通に考えたら、気持ち悪いことでしょ?」
「普通じゃないじゃん!俺等。
それに、一颯だって俺のこと愛してるでしょ?」

「無理よ……出ていって!」
「やだ。だったら、無理やりするだけだよ?
俺はもう遠慮しないよ!この日をずっと待ってたから」

もう……颯天になんの迷いもなかった。

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