【完結】イケメンモデルの幼なじみと、秘密の同居生活、はじめました。
「ここ。ほくろがある。美波、自分で知らなかったんじゃないの?」
 息を呑んだ。
 確かに写真の女の子にはほくろがあった。
 スカートから伸びている脚、その膝の裏のところだ。
 知らなかった、と美波はぼんやり思った。
 しかしあずみは美波以上に、美波の『他人から見た外見』をよく知っている。
 そのために、きっと……。
「なんで言ってくれなかったの……」
 あずみはそっと雑誌を下ろした。かたわらの机の上に置いてしまう。
 美波は下を向いた。
 自分の足元が見えた。今日はオシャレな撮影用制服も、よく磨かれたローファーも履いていない。
 今の美波は、いつも通りの美波。
「……ごめん……」
 なんとか言った。
 そしてそれがすべての答えだった。
  この状況まで来てしまって、「違うよ」なんて言えるものか。そんなことは火に油だ。
 美波は事情を説明した。
 震えそうな声で、ひとつずつ。
「ほ、北斗の撮影相手が……」
 言いかけて、はっとした。
 聖羅が北斗に告白した、なんてこと、他人に言えるはずがない。
 秘密である以上に、二人ともプロモデルだ。スキャンダル、というやつになってしまう。
 なのでそれは飲み込んだ。別のことを言う。
「急に、都合が悪くなって……、撮れる女の子が必要で……、それで、北斗に手伝ってくれないか、って言われて……」
 それは全部本当のことだった。
 あずみだって、それが嘘だなんて思わなかっただろう。
 でも多分、あずみが本当に良く思わなかったのは、別のところなのだと美波は、本当はわかっていた。
「そうなんだ。それでこんな、彼女みたいな写真を撮られたんだ」
 あずみの言った言葉は皮肉のようなものだった。
 そう言われて当たり前だと思ったけれど、美波の心はずきりと痛む。
「お、お手伝いだよ! 北斗の仕事の……。彼女なんて、本当のことじゃない……」
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