【完結】イケメンモデルの幼なじみと、秘密の同居生活、はじめました。
 あずみは目を丸くした。
 そしてなにも言わなかった。
 言えなかっただろう。
 こんなこと、すぐに聞かされて。
 美波は止まってしまいそうになったけれど、その弱気を振り払う。
 今度こそ、自分で言わなければいけない。
 話をするために誘ってくれたあずみ。
 事情を説明してくれた北斗。
 二人に甘えてばかりはいけないのだ。
「北斗のご両親が、お仕事で海外に行くことになって……」
 美波は話した。
 事情をすべて。
 あずみは黙ってそれを聞いてくれていた。
 一通り話したあと。
 やはりしばらく沈黙になったけれど、数秒であずみは「そうだったんだ」と言った。
 美波はそろっとあずみを見た。
 また怒らせてしまうだろうか、と思って。
 だってずっと黙っていたのだ。雑誌の撮影のことと同じだ。だから。
 でもあずみの反応は違っていた。
「近くに住んでるのかなぁ、とは思ってたけど」
 言われたことには驚いてしまう。
 どうしてだろう。一緒に登下校もしたことがないのに。
「え、な、なんで……?」
 つい聞いてしまったけれど、あずみは答えた。
「なんとなく……、北斗くん、住んでる場所が変わったような感じがしたし。雰囲気も少し変わったし」
 変わった感じ。
 確かに、と美波はそこでやっと気が付いた。
 確かに住んでいる場所が変われば、生活スタイルも全部変わってしまう。
 それがわかるひともいたのだろう。
 あずみは北斗のことを、よく見ていたから感じたのかもしれない。
 「そっか」と美波は言ったのだけど、そこで終わらなかった。
 あずみがもう一度口を開いて、でも少し言いよどんだ。
「でもほんとは……うーん、こんなこと言っていいのかな」
 ためらっているような口調だったので、美波はちょっと不安になった。
 けれど、聞いておきたい、と思った。
 隠し事はもう全部、なくしてしまいたい。
 この場ですっきりと。
 友達同士、ヘンな距離ができないように。
 だから美波は思い切って言う。
「いいよ。言って、ほしい」
 美波のそれに、あずみは「ありがとう」と言って、そして、ちょっと息を詰めて、それを吐き出すように、そっと言った。
「美波とこっそり付き合ってるのかな、って思ってた」
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