元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。

　どう返事をするべきか悩んだものの、結局なにも答えずに済ませた。どう答えようとレレンはそれ以上の反応を見せないだろうし、兄の機嫌がよくなることもない。

　そもそもどうしてこうなったかというと、レレンによる剣の指導中にエドワードが通りかかったからだった。

　訓練に付き合ってほしいと言った結果、彼は兄として妹に実力を見せつけようと快く受け入れた。しかし、予想は外れ、逆に完膚なきまでに叩きのめされてしまった。ティアリーゼにそのつもりは一切なかったが。

「あの、私……お兄様に怪我をさせたかったわけじゃなくて」

「うるさいな。いちいち言わなくてもわかってる」

「……本当にごめんなさい」