元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 うなだれたティアリーゼはその場に立ち尽くす。

 結局、兄は手を借りずに自身の力で立ち上がった。そして、勝ったにもかかわらず落ち込んだ様子の妹を見、苛立ちを隠しもせず言い放つ。

「本当に相変わらずだな、お前は。男顔負けに剣を振るう姫など、どこの国を探しても見つからないだろうな」

「それは……私はただの姫ではいられませんから。勇者として、いずれ魔王を倒す使命を」

「勇者、勇者、勇者。お前はそればかりだ。ほかに話すことはないのか」

 そう言われても、すぐに言葉は出てこない。黙り込んだティアリーゼを見て、エドワードは醜く口角を歪める。

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