元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「……都合のいい人間ならばほかにもいるはずです。それこそ、次代の魔王の胎となるためだけの人間が」

「私はあれがいい。ほかの人間はいらない」

「ですが、あの女は王を殺すために送り込まれてきたのですよ」

 目だけでトトを見上げていたシュクルが顔を上げる。

 それは言われなくてもわかっていたことだった。

「心変わりしたように見えますが、あれも人間の作戦のうちかもしれません」

「わからない」

「王もそうお考えだから、いまだにあのことを告げずにいるのではないですか?」

「……トト」

「言えば、あなたは本当に殺される。人間とはそういう生き物です」

 シュクルはほんの一瞬目を伏せた。

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