元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 人間と同じ大きさのカラス、と聞くとやや恐ろしさはあるが、こうして話した後だと不思議と親近感しか覚えない。

 ティアリーゼは、自分の感じたそれを、ほかの人間たちはあまり知らないのだろうと思った。彼らのことを知らないからこそ、亜人は人間を襲うもので、親しめるはずのない敵だと噂するのだ。

 カラスの亜人を見送り、改めて城門を見上げる。

 かつては家の扉でしかなかった。今はティアリーゼを拒むように見える。

 それは恐らく、ここを出るときと今とで気持ちが変わっているからなのだろう。

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