元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
(今日まで私はシュクルのもとで過ごしてきた。……ここに帰ってくるのが怖くて、帰りたいとも帰るべきだとも言い出せなかったから。だけど、本当はどうしたかったんだろう。私はここへ帰ってきたかった?)

 ぎぎ、と重い音を立てて門が開く。

 高台から門番がティアリーゼに向かって頭を下げた。

 ティアリーゼもまた頭を下げ、招き入れるように開かれた門の奥へと足を踏み入れる。

 帰国したティアリーゼを迎えたのは、驚いたことに兄のエドワードだった。

 案内されたのが客室であることに一抹の寂しさは感じたが、それも久し振りに家族の顔を見たことで霧散する。

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