元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
なんの用事だろうと考える間もなく、持っていた剣をレレンに渡す。
「お父様のところに行ってくるわ。これ、しまっておいてくれる?」
「他人に剣を預けるなと言いたいところですが、今回は仕方がないですね」
「よろしくね。お兄様も鍛錬に付き合ってくれてありが――」
兄に礼を言おうとしたが、そこに人の姿はない。どうやら、早々に立ち去ったようだ。
ティアリーゼに剣で敗北し、気に入らなかったというのはあるだろう。それ以上に、国王が呼んだ相手が妹だけだったというのが、彼のプライドを傷付けていた。
決して歩み寄ろうとしてくれない兄の心を思い、胸を手で押さえる。
「お父様のところに行ってくるわ。これ、しまっておいてくれる?」
「他人に剣を預けるなと言いたいところですが、今回は仕方がないですね」
「よろしくね。お兄様も鍛錬に付き合ってくれてありが――」
兄に礼を言おうとしたが、そこに人の姿はない。どうやら、早々に立ち去ったようだ。
ティアリーゼに剣で敗北し、気に入らなかったというのはあるだろう。それ以上に、国王が呼んだ相手が妹だけだったというのが、彼のプライドを傷付けていた。
決して歩み寄ろうとしてくれない兄の心を思い、胸を手で押さえる。