元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 小さな期待を抱きながら目を閉じて――。

 ――以前にもこんなことがなかったか、とはっとする。

「――いたたたたた」

 気付いたときにはもう遅かった。

 シュクルはご機嫌でティアリーゼの額に自分の額――正確にはそこにある角を押し付けており、鈍い痛みが頭いっぱいに広がっていく。

「いたっ、いたた……!」

「……難しい」

 肩を叩かれてしょんぼりしたシュクルが引く。

 ティアリーゼはえぐられかけた額を押さえながら、慰めるようにシュクルを撫でた。

「あなたの求愛行動がそれだってこと、すっかり忘れてたわ……」

「……もうしない」

「違うの、今のは私が勘違いしてただけだから……」
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